なるがままにされよう

このGブログも6年目に入りました。気が向いたときに書きます汗

1997年8月 四国一周 バイクツーリング記 第9話

なるがです。

 

 

佐田岬をクリアして、この旅の予定は終わってしまいました。しかも次の予定は立てていません。ただ出来るだけ海岸線に沿って走る事で、一周を達成したいという漠然とした目的はありました。

しかし、やはり明確な目的というものが無ければ人間はモチベーションが続かない生き物なんだと思います。今から向かう方面に友達がいるので、そこへ向かって走る事にしました。

だけど、当時は携帯電話など持っていませんでしたし、突発で思いついたので連絡先すら知らない状態で向かいました。向こうへ行けばもしかしたら会えるかも、ぐらいの感覚でした。(会えるわけねーだろ)偶然を期待するにも程があるw

 とにかく目的が出来た(無理やり)ので、今治市方面へと走らせます。

道後温泉をスルーしたのは今でも後悔していますw

 

 

それでは、第9話です。

 

 

国道197号線~378号線 峠磯崎林道

佐田岬を後にしてからはひたすら走っている。市街地も徐々に少なくなり、淋しい山道へと入っていく。陽はどんどん落ちて来ており、気温も下がり始めた。

378号線に通じるショートカットできる林道があり、少し不安だがその道を通ることにした。

 

太陽がもう海へ沈もうとしている。時間の経つのが早い。今夜は一体どこに泊まることになるのだろうか。だけど不安は無かった。この2日間で何とかなるというのが分かったから。

焦っても仕方ない。あまりの景色の美しさにバイクを止めて一服することにした。

辺りはシーンとして凄く静かだ。心が落ち着く。誰も居ないこんなところでタバコをふかし佇んでいると、まるで自然に包み込まれてしまいそうな感覚になる。自然は本当に素晴らしい。10分ほどで出発したが、いい休み方をした。

 

林道が終わり分岐に差し掛かった。松山市方面へと走らせる。左手に海が見えてきた。この頃から少し眠気が襲ってきて、振り払うのに必死だった。バイクでも走りながら寝れるのだ。単調な道と景色が長く続くと気が緩むので注意が必要だ。

 

特に変わったこともなく、ただひたすら走るだけ。時刻もすでに18:00をまわっている。テントを張りたいので、できるだけ陽のあるうちに今日のねぐらを決めたかった。海岸でいい場所を探すが、いや、もう少しいい場所があるはずだ、となかなか決められずにいた。

頼みの道の駅も人でいっぱいだ。お邪魔する気にはなれない。そうしているうちにだんだん陽も暮れ始め、気が付けば松山市内まで来てしまっていた。

やはり大きな街だけに交通量がものすごく、車と人がやたら多い。ここでもやはり居心地が悪く、早く抜け出したい気持ちだった。道後温泉のことなど全く頭になく、ただ街から出る事だけを考えた。

そして時刻は19:00をまわり、完全に陽は落ちた。

 

 今日のねぐらは

56号線から196号線に乗り、ようやく車の量も少なく走りやすくなった。しかし晩飯もまだ、今日のねぐらもまだ。一体どうなることやら。まるで他人事のように思いながらもまだ走り続けた。

20:00もまわり、そろそろ本気でやばいと思い始める。無理は禁物だ。

 

とりあえず行動を起こさねば。国道沿いのローソンに入り晩飯とビールを調達する。店員のお姉さんにキャンプ場はあるかと尋ねると、なんとすぐそこにあると言う。野間馬ハイランドというらしい。

この出来過ぎた流れ、やっぱり何とかなるわ~と安心してローソンを出る。

 

ところが、しばらく走ってもそれらしき標識は出てこない。いやまてよ、そういやそんな看板があったような・・・。やはりどうも通り過ぎているようだ。引き返すか迷ったが、面倒くさいのでそのまま走る。

さて、どうしようかと考えながらしばらく走ると、「市民の森公園」というのを発見。なかなか素敵な響きだ。感覚で今日のねぐらに決定。

 

一晩だけの思わぬ連れ

入っていくと売店があり、今まさに戸締まりをして帰ろうとしているおばちゃんがいた。

「今日ここで泊まりたいんですが、大丈夫ですか?」と聞いてみると、

「ついさっき自転車に乗った子が一人来て、上の方にいるから一緒に泊まってあげて」と言う。そう言うと、おばちゃんはおもむろに軽トラに乗り込み、

「案内するからついて来て」と、完全におばちゃんのペースに飲み込まれる。一瞬の出来事だった。

小高い丘の頂上には屋根付きの見晴らし台のようなものがあり、そこにはすでに一人ぽつんと佇む若者がいた。おばちゃんは「じゃあね」と一言残しすぐ帰っていった。

 

初対面の二人だけが取り残され、まるでお見合いのような少々気まずい出会いの中、とりあえず明るく「こんばんは~」と声をかける。何せ相手はチャリダーだ。一晩とは言え、バイク乗りの俺と共存できるのか?

彼は東京から来ているA.I君19歳。自転車で八十八ヶ所めぐり、お遍路さんをしているチャリダーだ。現在で7日目だという。

 

ランタンに灯を点け、ストーヴでさっき買ったソーセージとキャベツを炒める。そしてビールの栓をプシュとやって、ようやく一息つける。今日もお疲れさん、と自分に、そしてそばで佇んでいる愛車steedに。話しかけると本当にヤツは疲れてるなーと思えてくるから不思議だ。文句も言わずに良くやってくれている。お疲れさん。

 

周りには誰も居なくて俺ら二人だけだった。飯の匂いにつられてまたしても猫が寄ってきた。遠くからこっちを眺めている。ご飯をあげると喜んで食べていたが、それ以上は近付いてこなかった。

ビールを飲みながらランタンの灯を囲んで話は盛り上がった。最初の不安はどこへやら、同じ旅人同士ならツールは関係ない。

 

よく考えてみるとこの三日間、一人で寝る事は無かった。こんな事ってあり得るのか?そう思うと、神様がめぐり合わせてくれてるんだと思わずにいられなかった。

人との出会いは本当にいい。この旅をして正解だと心から思った。