なるがままにされよう

このGブログも6年目に入りました。気が向いたときに書きます汗

日本軍兵士ー アジア・太平洋戦争の現実 を読んでの感想を書いたのだが感想になっていない件について

なるがです。

 

 『日本軍兵士』という題名にびびびっと来て思わず手にした書籍です。題名からある程度の内容は予想できたのですが、中身は僕の予想をはるかに超える内容の濃いものでした。あまりに面白すぎて普段最後までたどり着けない(笑)のですが、これに関しては最後まで一気に読んでしまいました。僕にとって新鮮で大変興味深く、のめり込む内容となっておりました。

 過去の記事でも書いておりますが、僕のじいさん、祖父は太平洋戦争で戦死しております。そのためこの『日本軍兵士』という言葉にはすごく身近な感情を抱いております。この書籍では題名の通り兵士に焦点を当てているのですが、その後に続く単語「現実」。これが僕の興味をそそられる原因となり購入に至ったのでした。

 

310万人に及ぶ日本人犠牲者を出した先の大戦。実はその9割が1944年以降と推算される。本書は「兵士の目線・立ち位置」から、特に敗色濃厚になった時期以降のアジア・太平洋戦争の実態を追う。異常に高い餓死率、30万人を超えた海没死、戦場での自殺と「処置」、特攻、体力が劣悪化した補充兵、靴に鮫皮まで使用した物資欠乏……。勇猛と語られる日本兵たちが、特異な軍事思想の下、凄惨な体験を強いられた現実を描く。

(吉田 裕著 日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実)

 この扉文を読むだけでお腹いっぱいになりそうです。推算とはいえ犠牲者の9割が1944年以降という事実。そして体力が劣化した補充兵。異常に高い餓死率。

じいさんはまさにそれに当てはまります。34歳で招集された老兵とも言える年齢、マラリアによる体力低下、ジャングルにて1945年戦死。というより病死(推定ですが)でした。

 

 読み進めるにつれ日本兵がどれだけ劣悪な環境に置かれていたのか知ることが出来ます。ここでひとつひとつ挙げ出せばキリがないですが、全部ここに書き出して伝えたいほど(それは単なるパクリというものです)酷い現実が網羅されております。僕の様なちょっと戦争の知識はあるぞ、という人はかなり衝撃を受けます。自分のこの様な知ったかなぞクソだと思い知らされます。

 「戦争はしてはいけません」これは紛れもない正論です。だけどその戦争の奥の奥深くについて、兵士の感情におけるレベルまで考えてみる事など無いと思います。到底考えられないいろんな出来事が起きていたのです。

1944年8月から1945年8月の時期はすでに敗戦必至の状況にも関わらず、日本軍があくまで徹底抗戦を続けたため戦争は長期化し、多くの犠牲者を出す結果となりました。「絶望的抗戦期」とも呼ばれます。

制空権、制海権もなく、補給も、物資も、武器も、食糧も無く、内に目を向ければ死亡者・自殺者が出る程古参兵・下士官からの私的制裁に苦しめられ、病気になっても薬もなく、動けなくなれば自決(自殺)を強要され、事もあろうに仲間に「処置」(殺害)され、疲労は問題として扱われず、休暇もなく、「覚せい剤ヒロポン」によって無理やりこき使われ、精神論だけで機械化された米軍に立ち向かわされ、敵わないと分かると肉弾となり体当たりをしろと言われ、上官からは「死んで来い」「いつまで生きとるつもりか」と皮肉や嫌味を言われ……。そうして無能な指導者たちによって兵たちは苦しみながら死んでいったのです。

 

 この時期には徴兵の採用基準を満たしていなくてもどんどん兵隊にとられていきました。祖父のような若くない者から、これからの日本を担う元気な若者、挙句の果てには少年、知的障碍者までもが徴兵されました。一億総玉砕などという極端な精神主義でもって、まるで虫けらのように人の命が使われていました。

 

 本書では「死の現場」について膨大な資料をもって記されております。陸上における死の現場と共に、海上における死の現場「海没死」についても細かく取り上げております。船内の過酷な状況、潜水艦等によって攻撃を受けた時のパニック状況に加え、

圧抵傷と水中爆傷と共に、爆破による爆創、挫傷、挫創、骨折、熱傷、鼓膜損傷及び内蔵損傷などの複数の損傷が一時に合併するのが常であった。

(比島派遣一軍医の奮戦記)

と言うように一旦攻撃を受ければ、殆ど助かる見込みのない絶望的状況にさらされていたのです。おぼれ死んでいく者も多数、浮遊物の奪い合い、それにより両者ともに失命多数あり。他に漂流している兵が助けを求め上陸用舟艇にすがりつくのを将校が刀でその腕を切り落とす。との証言もあります。

海没死ひとつとっても多様な死の現場があったのです。また船に乗る前から発狂者が多数出たともあります。確実に死ぬと分かる不安からくるものでした。

陸軍においても、

一九四四年四月ごろから急に栄養失調症が増えてき、栄養失調による死者、すなわち餓死者が出始めた。マラリアにかかると四〇度の高熱が出てそれが一週間ぐらい続く。それで体力が弱まったところへ食糧が無く、極度の栄養失調に陥って、その後は、薬も食事も、ぜんぜん受け付けない状態になって死んでゆく--それが典型的な餓死のコースだった。諸病の根源は、食糧不足だった。

『ソロモンの陸戦隊 佐世保鎮守府第六特別陸戦隊戦記』

 

これ以上書くと本当にキリがなくなるので、やめときます(笑)しかしまとめ方がヘタですね〜。感想と言うより引用文の羅列。しかしまだまだ書き足りないです!(これ以上やると本当にただのパクリだっつの)

 とにかくこの凄惨で悲惨な現実は是非知って欲しいものです。教科書や映画では知る事は出来ない、教えてくれることもない。美化された過去の軍人や出来事がスポットを浴び、そして悲しみや感動ばかりがクローズアップされ、正にお涙頂戴と言わんばかりの現代の流れ。それらも否定しませんが、無残に死んで行った名も無き兵隊達を、この悲惨な現実を、色んなかたちで誰か表舞台に取り上げてくれ!(人任せ)

 

  とあるドラマにおいて受動喫煙シーンをカットせよとどこぞやの団体がNHKに抗議しておりますが、これがダメならこの日本軍兵士達は記憶からも消し去られ、陽の目を見る事は永遠にないでしょう。歴史をも無かった事にしろなど、やってる事は大本営と何ら変わらんです。

NHKさんはそれよりもドキュメンタリーでこの日本軍兵士達を取り上げて、証言と共にこの悲惨な現実を映像として広く伝えて欲しいです。

 

本書の感想と言うより、何を伝えたくてお前は一体何がしたいのだ?という結論に至ったのであります。

別の視点から戦争を知るという意味でも、是非一度読んでいただきたい書籍です。