なるがままにされよう

このGブログも6年目に入りました。気が向いたときに書きます汗

「失楽園」夏果てて秋の来るにはあらず・・・

なるがです。

 

 長かった僕の夏休みも今日で終わりです。明日からまた5時起きの日々が待っていると思うと憂鬱ですが、諦めて頑張るしかないですね。この夏は色々とタイミングが悪く、予定が中止になったりキャンセルになったりと、夏休みらしい事があまり出来ませんでした。その代わりではないですが映画鑑賞をしまくりました。前回の『きまぐれオレンジ☆ロード』に続き、ついでに借りたこの『失楽園』という映画を観たので感想などを書いていきたいと思います。

 

失楽園

渡辺淳一氏の恋愛小説であり、それを原作とした映像作品が今回のソレにあたります。小説は1995年9月から「日本経済新聞」に掲載され、1997年に映画化。興行収入40億円、社会現象を起こすほど当時大ヒットした作品となり、主演を務めた、役所広司黒木瞳というキャスティングも作品に華を添える結果となった様です。

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 1997年当時の僕は24歳、すでに成人でしたが全く興味を示さず、失楽園?老人ホームですか?ぐらいに思っておりました。不倫がテーマだとは知っていたのですが、恋愛EXPの乏しかった僕にはファンタジーとしか思えず、今の今までスルーしていたのでした。

しかし50歳も目前にした今、不倫というワードにもビビビッ!と反応するまでにEXPは上がっている訳でして、そうだ、気になっていたアレ見よう・・・と手に取ったのであります。この時点での僕の映画イメージは「純愛文学的なモノ」、そして若かりし頃の黒木瞳さんが見れる~位しか持ち合わせておりませんでした。

では、これからじっくりと鑑賞したいと思います……。

 

 

 

……えぐかったっす。

これはAVか、否、エロビデオ……いや、これはポルノだ、ロマンポルノと表現した方が良い。作品は平成とはいえ限りなく昭和の香り、煙草と香水、加齢臭が漂ってきそうな映像。現代の若者にこの映画を見せるのはとてつもなく危険だ。何せツッコミどころが多すぎる。

内容はとにかくセックスしかしてない(笑)自室で鑑賞していたのですが、子供達が廊下をドタドタとするたびに慌ててテレビに切り替えるほどです(急に入って来る)。僕が抱いていた純愛モノとかけ離れた内容に度肝を抜かれました。

しかし黒木瞳さん(凛子役)の体を張った演技、というか濡れ場(昭和的な言い回しだな~)も素晴らしいですし、そしてやはりあの美貌です。

そりゃそうなるわ(笑)。役とは言え役所広司さんがひたすら羨ましいぞ!と思ったのであります。とにかくやりまくってます。映倫に引っかかるのを避けるためにかなりのシーンをカット編集したそうですが、編集前のものは相当えぐかったと思われます(見たい)。それでも本作品もかなり「クセがすごいんじゃ~」と突っ込まざるを得ないほどの作品となっております。

 人によっては文学的とも捉えてますし、ただセックスしてるだけのクソ映画と吐き捨てる方もおられ、評価は様々です。テーマが「不倫」というタブーを扱ったものなので、見る人のEXPによって捉え方は恐ろしく変化するものだと思います。

 

 さっきからEXPというウザイ単語がチラホラしていますが、これはexperience、経験値のことを言います。ハイドライドというRPGロールプレイングゲームで初めて知りました。キャラのEXPが一定値に達するとレベルが上がります。指数関数でも交通機関でもありませんので注意しておいてください。(いらない情報)

 

 そうです、上映当時はともかくとして、今この時代にこの映画は人生の経験値によって捉え方が変わってしまうであろう難しい映画なのです。昭和~平成初期を知っている僕らおっさんには理解できますが、それ以降だと理解は厳しくなるでしょう。パワハラ、セクハラ、男が上で女が下、表現が露骨すぎ、社会観や倫理観も今と大違いです。そんな場面がたくさんあるので、今地上波で放映なぞした日にゃ大炎上間違い無しです。

 とにかく性描写がえぐい、否、えげつない(笑) AVならいざ知らず、思わず引いてしまうシーン多々あり。オイオイ、黒木瞳になんてことさせるねん! もうね、あんなことやこんなこと、えぇ!こんなことまですんの~⁈ なんです。また、役所広司が「これが良かった」と言ってピトっとした日にゃもうドン引きですよ。まぁ不倫の関係なんてやるのが目的の様なものだし、それにしても「どストレート」な表現には時代を感じさせられますね。

 黒木さんは渡辺氏に「これはオスとメスの話だから」と告げられた際、「自分という個性は存在しない。自分という商品を提供し使って頂く事」(みたいな事だったと思う)と言ったそうです。凄いプロ魂です。

 

 最終的には二人の関係はバレて、家族も、地位も、優雅な暮らしも失っていくのですが当然そうなりますよね。こういったセックス以外の描写も、中年のおっさんの今なら痛いほどわかる訳ですよ。久木(役所広司)が50歳の左遷されたサラリーマンという設定なので、それも自分に置き換えて見れるのです。これは全くの偶然でこのタイミングで鑑賞したのはまさに神です。

ただもう少しそういった、それぞれの人物の葛藤を作り込んでくれたら、もっと深みのある作品になったんじゃないかと思いました。

 

 もうネタバレですが、最後二人は鴨とクレソンの鍋を食べ、シャトー・マルゴーに青酸カリを混入し、心中という決断をします。しかも結合死w。

いや笑ってすいません!本当に悪気はないんです!それくらいまでに愛し合った二人を伝えたいのでしょうが、容易に想像してしまえるので正直萎えます(たぶんソレも萎えてると思いますが)。美しく終わらせたいならせめて抱き合ったままで良かったんじゃないの~?それを「結合したまま」とはぶっ飛んでいる。そしてその後の展開、即ち誰かが後処理をする場面まで想像してしまうから萎えてしまうのです。

 いえ、二人にとってはどう思われようと平気ですし、そもそも考えてないでしょう。逆に色々と詮索してしまうのは野暮ですね。EXP低い~と言われそうでもあります(笑)

 

 『夏果てて秋の来るにはあらず』(徒然草) 夏が終わって秋が来るのではなく、夏のうちにすでに秋の気配が作り出されている。物事は突然起こるものではなく、その予兆や気配は少しづつ始まっている。

作中でこのような古典を用い、いつかは終わりを迎える、別れを匂わすような言葉をさりげなく挿入しているところも実に上手いです。そういう視点でシーンを思い返すとだんだん深ィィ~となって来るから不思議です。さんざんセックス映画とか書いてましたが最後に撤回します。

 刹那に過ぎ行く二人の日々は本当に一瞬かと思うほど短いものだったでしょう。最期のシーンは重く暗くありながら尊厳ささえ漂ってきます。まぁ当然ヤルんですがね(笑)二人はその一番てっぺんにおいて、最高潮の時点での死を選択したのです。

 

 あぁ僕も一度でいいからそんな境地を味わってみたいものです。…いや、これは過去に味わったことがあるぞ。例えるなら、夏休みという刹那の中で宿題を放棄していた事。目の前の快楽に溺れたそれが、どんな結果を招くかも。

そして、夏果てて秋の来ることも分かっていたのに…です。

切ないですね。