なるがです。
この旅で僕はグルメに全く興味を示していません。
香川のうどん、高知のカツオ・・おいしいものがいっぱいなはずなのに、ツーリングの最中に食べたものと言えば、ほか弁、おにぎり、カップ麺、缶コーヒーにカロリーメイト、ポテチ・・・ひどすぎるw
しかし、もしグルメも目的に入っていたとしたら確実に・・・味気ない旅になっていただろうなと思うのです。スケジューリングはとても大切です。でも僕が当時立てたスケジュールは、〈室戸岬~足摺岬~佐田岬~帰る〉だけでした。当然宿泊地など決めていません。行き当たりばったり。
4日間という制約はあれども、妙な脅迫観念も無く、時間制限も無く、ひたすら自由な旅だった事が逆に良かったんだと思います。
それでは第8話です。
四国最西端 佐田岬へ
30分ほど休憩したし、そろそろ出発しますか。第3チェックポイントの佐田岬へと向かう。どんなところなんだろう、心が弾む。
長いワインディングロードも終わり、八幡浜市へと入る。大きな市街地でかなり渋滞している。さっきまでの安らぎはどこへやら、騒音とむせかえるような熱気が疲れる。早くここから抜け出したくて仕方なかった。
そんな時に限って道を間違えたりする。しっかり地図で確認していれば良いものを、焦って動くから失敗する。貴重な時間を無駄にしてしまった。まぁいい。
地図で確認、今度こそ正規ルートに乗った。
しばらくして【佐田岬】の標識を見つけ心が躍った。あとは岬を目指してまっすぐだ。197号線佐田岬メロディーラインに乗った。しっかりとした道で、山間を走っている。下を見るとすぐそこに海を臨める。車も少なく、天気も良く最高の気分で快走。
ピース サイン
長い直線道路の先、アスファルトの陽炎の中から1つのライトが浮かび、こっちへ走ってくるバイクがいる。よく見るとアメリカンだ。荷物も大量に積んでいる。
すれ違いざま互いの右手親指を立て、タッチするような格好でサインを交わし合った。
その直線道路にはこの2台しかいなくて、震えるほどシビれた瞬間だった。何故その時だけいつもと違うサインになったんだろう。またそいつが超満面の笑みだったのが忘れられない。
「道の駅 瀬戸町農業公園」で休憩。道の駅はほんとにありがたい。この旅でもたくさん世話になり大好きになった。
しかし暑い。この3日で顔は真っ黒、汗はダラダラ、トイレで顔を見ると汚すぎて笑える。しかもグラサン日焼けパンダ顔だ。もうどうでもよくなった。汚れもせず、汗もかかず、クーラーの効いた旅などハナからする気など無い。これがいいのだ。ここまで一緒に頑張ってくれた相棒に一声掛け出発する。
最果ての地へ
ガソリンが不安になってきたので、念のため満タンにする。おっちゃんと少し会話。
時々すれ違うライダーとピースを交わしながら走っているが、思ったより全然少ない。もっといっぱいバイクが走っていると思っていたので拍子抜けした感じだ。まぁ俺一人でも全然良いんだが。
バイクを止めてエンジンを切ると、すごく静かなのに気付く。耳鳴りがするくらいの静けさ。俺の求めている、この何とも言えない気分の静けさだ。そこでちょっと一服、これだ。時間も無いので先を急ぐ。
ようやく三崎町へ入った。ここまで来ると本当に誰も居なくて、とても淋しい雰囲気が漂っている。細い山あいの中の道を一人で走っていると、昼間でも少し心細くなる。すぐ横に見える海が果てしなく続いて、まるで地の果てへ行くかのようだ。『灯台』という道しるべに従い着実に進む。
そしてついに四国最西端、佐田岬に到着だ。
灯台へ 林の中を歩く
何台か車が止まっていた。俺だけかと思っていたらやっぱりいるんだ。バイクから降りて灯台へと向かう。が、その灯台へは林の中を歩いて20分ほどかかる。うーん・・・悩むがここまで来たなら行かなければ損だ。行くことに決定。
結構長い道のりだ。たまにすれ違う人と挨拶を交わし、ひたすら黙々と歩く。
今俺はすごい旅をしていると感じて何か嬉しくなり、こんな淋しいところで独りでいる事に少しセンチな気分にもなった。
しかしとにかく暑い。汗だくになりながらもようやく到着。着いた~!けど誰も居ない。
誰かに写真を撮ってもらいたいが、どうにも人が来る気配は感じられない。階段に座りタバコを吸いながら待つ事約20分、やっと一人来た。待ってましたとばかりにカメラを差し出し撮ってもらう。
あまりにも淋しい場所だった。長居する様な場所では無いが、何故だか少し名残惜しい気持ちもあった。それでも行った価値は十分にある。
帰りの道のりは早く感じた。入り口で女の子二人が写真を撮っていたので、撮ってあげようと声をかけたら断られた。え、ショック…。何も悪い事してないのに…顔がパンダだし汚すぎたから? あ、…きっと超臭かったんだろう。なんせ風呂に入ってないからな!
でも断るなんて失礼だよな~まぁいいとして。
佐田岬ともお別れだ。少し先に九州が臨める。
再び来た道を戻る。また「道の駅 瀬戸町農業公園」に寄り、コーヒーを買って休憩。ベンチに腰掛けタバコを一服、15:43。もう太陽も傾き始めて来た。少し焦りが出てくる。気を入れてもっと先へと進む。